孫子兵法戦略論
これまでの戦略
日本の企業は戦略好きで新し物好き
日本における企業戦略はこれまで数多く紹介されてきました。競争戦略、戦略計画、マーケティング戦略等があり、更にそこから派生したツールが生まれていきました。
もともとは1960年代に組織の内部状況と組織を取り巻く外部状況をからくる期待を一致させ組織を社会的変化に対応させようとする考え方から企業戦略は始まりました。これらは後にSWOT分析として形式化されていきます。
1970年代に入るとアンゾフやスタイナー等が戦略計画を提示し先ほどのSWOT分析もその中に取り込まれていく。戦略計画はきちんとしたステップで順序だてられているので、多くの企業が戦略計画作りが広まりました。
しかし、この戦略計画は限られた人で企画部門で作られる傾向にあったので戦略と実態が乖離してしまうことがしばしばあり、徐々に数は少なくなりました。
さらに、1980年代に入ると競争戦略が提示されます。ポーターに始まる競争戦略は競争分析に力点が置かれます。5FORCEもそこで紹介されています。競争戦略を応用したビジネスコンサルタントたちは、その業界を知らずして自らが作ったフレームワークに落とし込むことができました。PPMもかなり使われたツールです。
1990代には、新たな戦略計画としてバランススコアカードがCS、ES、ファイナンスなどを取り込み体系化した戦略を提示します。KPIもそこから生まれました。マーケティングからもコトラーがPEST分析やSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)、4Pを紹介されています。
その後も新たな戦略は提示され企業はそれぞれの戦略の作り方を新しいものに変えながら自らの戦略を作りこんでいきます。
多くの企業はそれぞれの戦略が自社に合っているかよりも新たなものを取り込もうとします。
一貫性のないモザイク模様の戦略
そもそもそれぞれの戦略には、企業に問いかける思想なり理念があって考え方をまとめているのですが、その過程で生み出されたツールが独り歩きする傾向です。
ある戦略策定の進め方の紹介では、マクロ分析でPEST分析、ミクロ分析ではコトラーの5FORCE 、ボストンのPPMを使い、環境分析のまとめとしてSWOT分析を使用し、基本戦略としてまたポーターのSTPとコトラーの4P、実行戦略でバランススコアカードのKPIを使うなどと多彩です。
ツールそのものには単独で使用し効果が上がるものも多いかと思いますが、ツールを使う人の知見と力量が試されるかと思います。
そもそもそれだけ多くのツールを使わないと戦略は策定できないのでしょうか?
中小企業に合った戦略がない
確かに政治、経済、社会や技術などの自社を取り巻く要因を理解しておくことは重要です。しかし、そのことから自社が取りうるべき戦略に落とし込む必然性を見出すことは容易ではありません。経済のプロやコンサルタントでもこれしかありませんと断定はできないわけです。ましてや、それを専門にしていない経営者や管理者が上手くまとめるのは難しいでしょう。ましてや、中小企業でいうまでもありません。
事例)戦いに勝ち残った?時計店
ある時計店の事例を紹介します。地方都市にある50年以上経営している数坪の面積しかない時計店です。在庫も古く店も薄暗い時計店は創業以来ご主人1人で切り盛りしております。以前は近くに地域1番店の時計店やそれに続く時計店がありましたが、商品力や資金力で劣る小さなお店は大きなお店から修理の仕事をもらって細々と経営を続けました。そのうち、ほとんどの収入を修理で得るようになりました。時計業界は国内メーカーの衰退やスマホなどの他業界からの代替品でどんどん市場が縮小しています。とうとうその地域でその小さな時計店しか経営していなくなったのです。
でもなぜ経営できているのでしょうか?それは他の大きな時計店はなくなっても、時計を持っている人がいる限り修理の需要はあります。近隣の町も同様なので、残れば残るほど仕事は増えます。小さなお店の経営者の人に聞きますと今は仕事はあるけど高齢なのでできる範囲で続けているそうです。
地域における、リーダー、チャレンジャー、フォロワーまでも淘汰されニッチャーしかいなくなったわけです。小さな時計店の経営者が意図した戦略を実行した訳ではありません。
もし、PEST分析で市場が縮小し、5FORCE 分析で代替品の脅威にさらされているので、STPで修理に特化し、競合他社が淘汰されていきその段階になったら収益が改善されるので、その時期を待つというような戦略が導き出されるのでしょうか?
中小企業に合った戦略とは
中小企業の戦略で必要な要素
ATOOSが考える中小企業に合った戦略とは、経営者が自ら学び実践し、それを繰り返しより応用力が付けられる戦略をお勧めいたします。
そもそも中小企業において戦略に必要な要素とはなんでしょうか?
〇競争はできるだけ回避したい
どの業界も競争のないところは少ない。しかしながら、競争するとなると資源の消耗が余儀なくされる。できるだけ競争は回避したいと考えるのが中小企業のいつわざる本音ではないでしょうか。
〇競合の多くは自社よりも大きい
競合には大手もいるし、同じ中小でも自社より大きいところもあるというのが中小企業の多くのケースではないでしょうか。ですから、対大手もしくは、自社より大きなところと対応するための戦略が必要だと思います。
〇具体性が必要
自社にぴったりのオーダーメイドされた戦略とはいかないまでも、できるだけ具体的ですぐに応用できることも、できれば戦略に求められます。
◯基本はと応用がある
競合が多い以上同じ戦略をとるのは手の内が相手に分かってしまいます。そのためには応用が必要になります。
〇費用と時間をできるだけかけない
中小企業は限られた資源と時間の中でしか戦略は立てることはできない。ましてや、戦略を立てるのに多くの高額を支払うことはできない。
孫子の兵法は中小企業に適している
孫子の戦略
孫子の兵法は今から2500年ほど前に、孫武という武将が書き表しました。そんな古い考えが今の世の役に立つのだろうかと考えてもおかしくはありません。
しかし、多くの人が知る有名人の中にも孫子の兵法を愛読書にしています。マイクロソフトの創業者のビル・ゲイツ氏、ソフトバンクの孫子などです。中小企業経営者の中にも多くのファンがいることでしょう。
先ほど挙げた中小企業の戦略に必要な要素と比べてみます。
〇政治家の目線でも書かれておりできるだけ競争を回避することを目的としている
有名な「戦わずして勝つ」の言葉が表しているように、できれば戦争はしたくはない。戦争は国力と戦力の消耗だからです。競争も同じです。
〇弱者の戦略が説明されている
孫子の兵法の中には、自分と相手の大きさの比較があり、それによって戦い方の違いを説明しています。その中に自信が弱い立場ならこう対応せよと説明しています。
〇内容は具体的で簡潔
将軍という立場で軍人ですから内容は具体的です。また簡潔に説明されています。
正法と奇法の組み合わせの重要性と説明しています。
正法という基本的な攻め方と奇法という応用を組み合わせることで、相手にこちらの攻め手を分からないようにすることを説明しています。
〇孫子の兵法は自分で学べる
孫子の兵法は古くからある書物なので探せばほとんど無料なものから、詳しい解説書、漫画で説明したもの、ビジネスに置き換えたもの等様々なものがあります。
孫子を理解するにはコツがある
構成の独自性
孫子の兵法は計篇から始まり用間篇まで十三章で構成しています。表面的にみると将軍や地形、戦い方の話が様々な章で説明されたりします。現代の書籍だとカテゴリー化されていますので、将軍についての話はまとまって書かれたりすることは多いと思いますがそういうようになっておりません。しかし、それぞれが関連しているために読んでいくとその意味は理解できます。
最後に
孫子の兵法がいかに中小企業の戦略に合っているかを理解していただけましたか?
今後、応用方法で具体的に孫子の兵法を引用しながらATOOSとしての応用の仕方をご紹介していきたいと思います。