五行市場論による業界突破者の戦略

業界突破者とは

日本に限らず既得権がある業界に参入していく、挑戦する、業界を破壊し市場を作り直すことはそれほど簡単ではありません。
シェアライドがタクシー業界の規制を担当する国交省の変遷により窮地に陥りました。そのために人材が流出事態に陥りました。このように、突然として障壁が生じるケースもあれば最初から障壁が目に見えていて挑戦していくケースもあります。
このような、失敗するあるいは成功する途中の段階での挫折かもしれませんが、これまでには既得権の強固な城を攻め落城させた方々がいます。この人々を業界突破者と呼びます。

既得権の強固な城攻めに失敗して嘆かないために業界ができるまでの生成と構造を理解し、業界突破者の成功例を参考にすることが必要だと思います。

既得権業界の生成発展段階

既得権ができるまでに長い年月がかかって出来上がることが通常です。これを時間軸で表すと事業形成期、競争者参入期、初期の規制開始期、業界団体形成期、政治関係構築期、既得権業界完成期という流れになります。ただし、この流れは基本となる流れで状況によって流れが変わります。

事業形成期

ある事業者がこれまでにない商品やサービスで購買者に販売していきます。イノベーター理論のイノベーターやアーリーアダプターが購入していく時期です。キャズムも発生するのですが、革新的な商品であればこの事業形成期を乗り越えていきます。多くの商品はキャズムを乗り越えていくことはできません。

競争者参入期

事業形成期において成功した新規事業者を見ていた別の市場の事業者からの参入が始まります。既存市場では競合者が新規事業者を意識した競争戦略が始まります。最初は新規事業者は先行しているので参入者や既存事業者は模倣戦略をとるしかありません。
しかし、段階が進むにつれて差別化戦略を行う事業者が現れますが、多くの場合価格競争か質の悪い粗悪品を販売する業者が増えていきます。

初期の規制開始期

行き過ぎた競争の結果、管轄官庁の規制が始まります。該当する法律を基に指導、注意、罰則が科されていきます。消費者から管轄する官庁に規制の要求が上がってきたり、刑事的な問題から見過ごせなくなったりしてくる段階です。

業界団体形成期

初期の規制が行われた結果、行政からの指導や自律的な行動から業界団体が設立されていきます。その時点での業界地位が業界団体の中での地位に影響を与えます。その後に業界地位が変化し団体の地位が変化する場合もありますし、当初の地位に変化が起きない場合もあります。業界団体ができることで競争が抑制され販売価格、新規事業者の立地、販売方法、休日の時期、仕入業者の独占、団体名の名称独占、会費の義務、退会による権利のはく奪、団体内規制違反者への罰則、団体強化運動への参加義務、労働者への交渉などあらゆる団体からの業界内事業者に対して権利と義務が生じていきます。団体に入いらずに不利益が被るか否かは規制強いか弱いかに関わってきます。
もちろん、団体内の規制の種類が多い場合もありますし規制が少ない場合があります。この後に段階であります政治関係構築期、既得権業界完成期を経た後さらに規制が強化されていくのが常です。

政治関係構築期

業界団体は業界内から得られた収入から団体をより強固のものにしようとして、政治にかかわっていく段階です。もちろん、ロビー活動ですので合法です。団体は他業界との摩擦や関係構築、業界内の問題などで政治への影響力を求めていきます。政治家も業界からの支援を受けることで支持者を増やすことの可能性が期待できます。
関係団体との協力は団体を維持発展させていくのに必要不可欠です。

既得権業界完成期

政治家は団体からのロビー活動を受けて業界をより良くし国民の発展に寄与するために行政への働きかけを増やしていきます。
行政は、国民の発展に寄与するために業界内の規制を緩めたり強めたりしますが、多くの場合は業界団体の望む方向に近づいていきます。先ほど述べて様に業界団体ではそれを受けてさらに業界内に対する規制の強化により業界団体はより強固な存在になっていきます。

先ほども述べたように、段階は状況によって変化していきます。既にある業界で規制緩和による業界がいきなり生まれるIR業界や業界団体があるものの自由競争が優先され業界団体が大きくなれない、飲食業界などのケースがあります。

五行市場を基に既得権益者から見た相生の循環は次のようになります。

業界突破者の事例

テレビ業界

テレビ業界が黎明期だったころ娯楽の中心は映画でした。映画業界には既に多くのコンテンツがあり、いわゆる銀幕のスターたちが多く活躍していました。新たなテレビ業界がより多くの視聴者に観てもらうためにもそのようなコンテンツやスターたちが必要でした。
それらを得るために映画業界のコンテンツやスターにアプローチしたのですが立ちはだかったのは映画業界の経営者たちでした。そのためにテレビ業界は自前でそれらを作るしかなく、しかしながらそのことが新たな発想がこれまでにないコンテンツを作り、これまでにいなかったようなスターを輩出していきました。

1000円カット

男性中心の理容院は全国理容連合会が業界唯一の団体として運営されています。戦後、理美容業は増えていきました。その結果、

”第二次世界大戦後、理容業・美容業は安定した収入が得られる職業として就業者が増えていきました。そのため理美容業界は過当競争に陥り、利潤を無視した値下げ合戦などの共倒れしかねない競争が繰り広げられ、経営をしていくことが困難なサロンが増えていきました。それは衛生水準の低下にも繋がり、消費者にとっても不利益をもたらすことになりかねない状況に陥っていきました。業界では保護を求めて国会に陳情を続け、1956年に「環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律」(環衛法)が成立しました。”引用:自分で髪を切るセルフカット講座

この法律は、広範囲かつ強固なものでした。

”この環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律は、理容組合・美容組合は組合員の健全な営業が阻害される恐れがある場合、「適正化規程」を定め、組合員に対して営業日や営業時間、料金などの制限を課すことができるというものでした。 事実上のカルテルでしたが、独占禁止法の適用は除外されるというものでした。この法律によって組合が決めた月曜日の定休日を組合店は守らなくてはならず、理容室、美容室の月曜日休みは続いていきました。(非組合店の理容室、美容室は関係がありません)
*カルテルとは、企業連合のこと。企業間(事業者間)がお互いの利益を守るために協議して、価格や生産数量や販売地域などで協定を結ぶことです。これらは消費者の利益を損ない、経済の健全な発展を阻害する恐れがあるため、独占禁止法でカルテルは原則として禁止されています。”引用:自分で髪を切るセルフカット講座

1000円カット(現在税別)の代名詞となったQBハウスは1995年に東京神田に設立し、1998年度ニュービジネス大賞および1998年度ASIAN INNOVATION AWARDS受賞しています。
しかし設立当初に同業者からのイジメにあいます。

”開店当初はかなりの同業者から嫌がらせを受けた。例えば、オープンして1週間か10日に、
「お店で散髪してもらったら、頭におできができた」というクレームの電話がかかってきた。「どうしてですか?」ときくと、「お宅のお店で、何かに感染したらしい」と言う。そこで、「当店は保険に入っていますので、きちんと補償させていただきます。つきましては、お名前とお電話番号をお聞かせください」と言うと名乗ろうとしない。「またこっちから連絡する」と言って電話は切られたが、それ以降連絡はなかった。”引用:大前研一のアタッカーズ・ビジネススクールPartⅤ

さらに組合からの嫌がらせも受けます。

”しかし、一番ひどいと思ったのは、東京都理容専門学校の運営を東京都から委託された東京都理容協同組合が、当社の社員の多くを入学させなかったことだ。落とされた社員というのはほとんど20歳すぎの若い子で、その子たちに話を聞いてみると、みんな面接でバカ正直に「QBハウスで働いています」と答えていた。一方、受かった社員というと40代、50代のそこで、そういう人たちは当社で働いていることを隠していた。さすがに年の功だけあって当社で働いていることがわかるとマズイな--と、ピンときたのだろう。
私は東京都理容協同組合に「なぜ、若い子たちは落とされたのですか?」と問いただした。すると向こうは平然と「筆記試験の成績が悪かったからです」と言う。
50歳の人より22~23歳の若い人たちのほうが私は冴えていると思うだが、とにかく理容業界というのはそんな業界だったのである。”引用:大前研一のアタッカーズ・ビジネススクールPartⅤ

しかもそれだけで終わらない。保健所に抵抗を受けたと言っています。

”さらに理容業界だけでなく、この業界を監督している保健所の頭の固さにも大変苦労した。例えば、私どもは最低5坪である。5坪の場合、美容の届け出だと椅子が6台置けるのに対し、理容の届け出だと3台しか置けない決まりになっている。なぜかというと、理容の椅子というのは、髭を剃るのでリクライニングするようになっているからだ。
しかし、私どもの店では髭を剃らないので、リクライニングしない椅子を使っている。だから、「6台置かせてくれ」と言っても、「そういう決まりになっています」の一点張りで、3台しか置かせてくれないのだ。”引用:大前研一のアタッカーズ・ビジネススクールPartⅤ

無論、この保健所の対応はQBハウスへの嫌がらせないと思います。法律を施行したならば理由は関係なく法律に従うことを法律は強制するということです。

少し事例は長くなりましたが、業界の生成発展段階の既得権業界完成期での業界突破者の試練としてはこの事例は大変に参考になる事例だと思います。

業界突破者の失敗例

コムスン

人材派遣業のグットウィルが介護業界に参入して全盛期では業界トップの事業者数まで成長しました。しかし、ニチイとの競争激化から自社ケアマネージャーに対してのノルマの強要や様々な競争原理の強化から介護業界になじまない運営の仕方が問題になりました。さらに、介護保険の不正請求という問題を引き起こし厚生労働省から介護サービス事業所の新規及び更新指定不許可処分を受けます。そして、当時の折口社長は介護業界からの撤退を余儀なくされました。
介護事業所は種類も多く多岐にわたるため業界団体はあるものの業界内の既得権益に強く動く団体ではないと思います。

業界突破者の戦略

こちらについて興味がある方はお問い合わせの方からご連絡ください。

最後に

業界突破者はある意味では市場を再活性化する役割を担っています。ただし、既得権益者を守る業界団体が悪い訳ではなく行き過ぎた業界保護が消費者に対する不利益を生じさせ、新規参入者を拒むことで業界そのものを衰退させてしまうことが問題なのだと思います。
ATOOSでは次のようなあるべき姿を考えております。