自己鍛錬論によるやり始める力

やり続ける力とやり始める力

実はこのやり始める力を説明する前にやり続ける力を考えていました。
私自身やり続ける力の方に興味があったからです。年齢が高くなってくるとやり続けることの方が簡単になってきます。
ところが何か新しいことを始めようとすると途端に億劫になります。アイデアは思いつくのに実行できない。実行を先延ばししてしまう。実行できない言い訳を考えてしまいます。
個人差や年齢差によってやり続ける力とやり始める力のどちらかに得手不得手があるのではないかと考えます。
それらを克服することに役立てたらと思い、今回もATOOSの考えと絡ませながら様々な考えをご紹介していきます。

やり始めるきっかけ

やり続ける力とやり始める力をエンジンに例えると、スパークプラグが着火しエンジンに火が回るのがやり始める力です。その着火を基にピストンがシリンダーを回しストロークを繰り返すのがやり続ける力です。
その最初の着火は、どのように起こるのか?

問題解決型

現状や過去の中に問題を抱えておりそれを解決したい、しなくてなならないと考えてやり始めるのがこのタイプです。
問題には、困っている、苦しい、気持ちが悪い、調子が悪いなどの「不快」を感じており、それを何とか解消したいと考えるのがこのタイプです。
もちろん感覚的な問題でなく、現状のままだと売上が減少しているのでその対応が必要だというような論理的な考えから導き出される問題もこの範疇に入ります。
問題が強ければ強いほどやり始めるきっかけの力が強くなってきます。
目指す姿と現状にギャップがあり、それが不満(問題)をまねきその認知的不協和を解消とするのがこのメカニズムです。

願望達成型

将来に対しある願望を持ちそれを達成したいと考えやり始めるのがこのタイプです。
願望には、夢がある、なりたい職業や状態がある、達成したい希望がある、こうなりたいビジョンがあるなどの「快」をイメージしておりそれに近づこうと努力するのがこのタイプです。
こちらも願望が強ければ強いほどやり始めるきっかけが強くなっていきます。
なりたい自分や達成したい希望を強くイメージすることでそれを達成した時の自分の状態をモティベーションとし、さらに自分のキャリアを想像することでモティベーションを向上することが出来ます。

変化型

やる始めるきっかけは、問題解決型と願望達成型だけでしょうか?
例えば、「知人のすすめで始めた」はどれにに入るのでしょうか?
その他にも「友人や同僚に負けたくないので始めた」「生活費を得る手段として」「やると楽しそう」「資格を活かしたい」「能力向上のため」などはどれに入るのでしょうか?
言葉を少しを変えて「自分で気づかないことを友人が気づかせてくれたので始めた」「生活費が現状のままでは足りないので良い状態にするために始めた」「現在の能力を理想の能力に近づけるために始めた」は問題解決型。「楽しそうだからやりたい」「資格を活かしたい」はしたいという願望があるから願望達成型と分けることもできます。
しかし、無理やりに問題解決型か願望達成型に分けずに変化形と括るほうが良いと思います。ちなみに、神戸大の金井壽宏教授は著書「働くみんなのモティベーション論」の中で「持論系」と呼んでいます。

ATOOSでは、問題解決型の思考には「比因人常為兵による原因分析法」を、願望達成型の思考には「大分流感驚楽による発想法」を紹介しています。詳細はメニューから参照してください。

目標の力

「やり始める」ためには、目標設定が重要です。「流される人」の口癖は、夢が持てない、目標が定まらない、目標がすぐ変わってしまう、目標を立てても挫折することがしばしばなどです。

もう一つの言い訳は「自分にとって本当にやりたい目標が見つかれば、私にだって始められる」という言葉です。
ATOOSはこれに疑問を抱きます。この言葉が本当ならば、多くの夢追い人が挫折するのでしょうか?目標自体が悪かったのでしょうか?

バフェットのアドバイス

投資家のウォーレン・バフェットが自身の飛行機の運転士にしたアドバイスがあります。
それは、
1.目標を25個紙に書き出す。
2.自分にとって何が重要なのかをよく考えて、最も重要な5つの目標にマルをつける。3.マルをつけなかった20個の目標を目に焼きつける。そしてそれらの目標には今後一切関わらないようにする。なぜならば気が散るからだ。よけいなことに時間とエネルギーが取られてしまい、最も重要な目標に集中できなくなってしまう。(引用:やり抜く力GRID)
というものです。このアドバイスに関して興味深いのは、目標が複数あることです。25個というのはそれぞれの目標レベルはどうなっているのだろう?関連していないのだろうか?なぜ5つなのだろうか?ということが気になります。

目標設定の効果

我々は目標を立てれば立てないよりは効果が高いことはなんとなく理解しているつもりです。漫然と活動しているよりかは目標があったほうが具体的にその方向に向かうからだと信じています。
しかし、目標を立てれば自分や周りから縛られるのも事実です。それならば、どれくらいの効果があるのだろうか?それがはっきりしていれば動機づけになります。
目標設定の効果を初めて調査したのはメリーランド大学のエドウィン・A・ロック達です。ロックの目標設定論の調査では目標設定においての業績の改善は中位で16パーセント(最高位では57.5パーセント)改善されたというのです。
これならば目標立てる気になります。多少のめんどうくささがあっても16パーセントほど効果があれば目標を設定する動機づけになるでしょう。

目標の因数分解

目標設定で出てくるのは目標を何段階に分けて最終目標、中間目標に分けていくというものです。このポイントはドンと目標を一つ設定するのではなく、細かく分けることによって達成しやすく徐々に難易度を上げていけば最終的な目標にたどり着きやすいという考え方です。
この考え方は、問題解決でも同じように問題の塊を分解し一つ一つ解決していくという考え方です。
ATOOSでは「孫子の兵法戦略による因数分解」という考え方があります。課題を定量化し、因数に分解し、指標化し、活動の内容を見える化するものです。
目標を分解し、より活動しやすくすることで最終目標を達成しやすくしていきます。

発想の力

発想は新たな着火の設計図のようなものです。
新たな発想がやり始める方向性を生み出すのです。
発想の方法は ATOOSでも「大分流感驚楽による発想法」を紹介しております。
しかし、発想はあくまで着火の設計図で着火そのものを行っておりません。

モラル・ライセンシング

人は何か良いことをするといい気分になり、そのせいで自分の衝動を信用しがちになります。このことを心理学者はモラル・ライセンシングといいます。先のマクゴニガルの「スタンフォードの自分を変える教室」の中で紹介されている研究では、被験者に二つのうちどちらのボランティアをやってみたいかをたずねました。ホームレス支援施設で子供たちに勉強を教えるか、あるいは環境改善活動に参加するかです。すると実際に参加申し込みしたわけでもなく、ただどちらの活動をしようかと考えただけで、被験者はなぜか自分へのごほうびにデザイナージーンズでも買いたい気分になってしましました。つまりしようと考えただけで、したつもりになってしまうのです。

これは発想にも同じことがいえます。「発想しただけで、実行したつもりになってしまう」ということです。
「やり始める力」は実行して初めてその力は発揮されるのです。発想でとどまってしまっては何にもなりません。

意志の力

やり始めるには意志の力が必要です。
ではどのようにして正しい意思の力を発揮させればいいのでしょうか。
意志力を鍛えるためのトレーニングの事例を心理学者のケリー・マクゴニガルの著作「スタンフォードの自分を変える教室」の中で、内容を紹介しています。
そのトレーニングは、参加者は普段特にコントロールしていないような些細なことをコントロールしてもらい自己コントロールの筋力を鍛えてもらうものでした。
参加者は目標を設定し、それを決めた期限内に達成することを求められました。この方法は、例えばクローゼットの整理など、ずっとやろうと思っていながらできていないことに応用できます。

こんまりのかたずけの魔法

このケリー・マクゴニガルの事例を見て発見をしました。こんまりの著作「かたずけの魔法」というのがあります。以前からこんまり氏のかたずけに関する方法についてよく考えられた方法だなと思っていました。単なるかたずけのテクニックに終わることなく思想や人間の性というものをきちんと織り込んでいるのです。現在では日本だけではなく世界中に注目されて活動しています。

モノの整理は執着の整理

こんまり氏はこういうのです。「毎日少しづつの片づけの習慣では一生片づかない」「片づけは祭りであって、毎日するものではない」
人はモノへ執着を持ちます。それを少しづつ断ち切るのはムリだというのです。
だから、「一気に、短期に、完璧に、まずは「捨てる」を終わらせる」というのです。

人間の性にもくさびを打つ

とはいえ、整理をすればかたずけになるのではという言い訳には、「収納が得意な人ほど、モノをためる人になる」
もったいないから家族にあげようとすると、「自分がいらないものを家族にあげるのはやめる」

そして内省させる

かたずかない理由は、「家族にイライラするときは、自分の部屋に原因がある」
まずは、「モノを捨てる前に「理想の暮らし」を考える」
そしてまとめとして、「片づけとは「モノを通して自分と対話する作業」である」とくるのです。

そして将来に目線を向けさせる

かたずけという問題解決型から始まり、将来に結び付けていきます。「部屋を片付けると、なぜかやりたいことが見つかる」「?「本当に大切なもの」の見分け方」「「モノがなくても何とかなる」と思えるようになる」
そして締めくくりは、「本当の人生は「片付けのあと」に始まる」
誠に上手いといいたい。

かたずけを通して意志力をつける

こんまり氏が世界中で人気なのは、「かたずけ→意志力」という流れがありかたずけが出来たら自分の意思が強くなったことを読者に体験させているのです。これが、「意思力→かたずけ」になると、とたんに説教臭くなるのがポイントです。
かたずけること、掃除すること、整理することは意志の力をつけることの大きな証明だと思います。

意志力の感染

自分の内発的な意志力があればやり始めることはできますがなかなか内発的は意志力がない場合にはどうしたらいいのでしょうか?
その場合には他の力を利用するを考えてみましょう。
友人や知人が興味があることに影響されて同じ興味を持った経験はないでしょうか?
例えば、友人がジムに通い始めて健康そうになったのを見て自分もジムに通い始めた。知人が写真を趣味にしていて展覧会に出品しているのを見て自分もカメラを買ったなど影響を受けることがあります。
特に以前から興味があったことを誰かがやっているのを見ると、もうすぐに意志は着火するでしょう。

とするならば、自分のやり始めたいことを既に行っている人に近づけばいいのです。
ん?そんな人がそばにいない?いまはSNSがあるじゃないですか。あるいは、ブログでお友達になればいいのです。

逆境の力

逆境とは、自分の人生の中でかなり苦しい状況のことですが、このような状況でやり始める力はどのような関係にあるのでしょうか?
ナポレオン・ヒルは著書「悪魔を出し抜け」の中で、「それまでただ習慣で歩いていた道がとうとう行き止まりに来てしまった。その状態が失敗なのだ。行き止まりまで来てしまったら、その道はあきらめて、別の道を行くしかない。それが新しいリズムを作り出すということなのだ」といいます。
これまで、目標を持たずに流されるまま来てしまった。そしてとうとう行き詰まりに来てしまった。そして今度は周りのリズムでなく自分のリズムで動き出そう。

さらにヒルは続けます。「ヒプノティック・リズムの働きによって人間は、自由に考えるという特権を失って奴隷の身分に落ちることもあれば、逆に自由に思考を操ることで大成功を収めることもできる」ヒプノティック・リズムとは本質的に、精神的なものであれ肉体的なものであれ、どんな習慣も永続的に固定しようとするもののことと説明しています。

つまり、自然に力は人間のどんな習慣でも固定化させてしまう力があります。ですから、悪い習慣。流されることも習慣化されてしまう。しかし、自由な意志がその悪いリズムから自分を解放させ、良いリズムに導くのだと。

最後に

「やり始める力」は、「やり続ける力」と同様に人間にとって重要なものです。人間の癖を知り、自分の癖を知ることで今まで流されやり始めることが出来なかったことを、この機にやり始めることをお勧めします。先ずは、小さな一歩を。