孫子兵法戦略による因数分解
戦いは数の計算で行う
孫子の兵法の中に
兵法は一に曰く度、二に曰く量、三に曰く数、四に曰く称、五に曰く勝。地は度を生じ、度は量を生じ、量は数を生じ、数は称を生じ、称は勝を生ず。
とあります。つまり合理的な計算をして戦いは勝つのであるという意味です。
度はものさしで測るということです。孫子の時代ならば戦いとなる戦場をはかるということですが、今回は顧客への質問を通して顧客が抱えている問題や目的を理解していきます。
量は升目ではかるということです。それによって投入する物資・兵器の量が決まります。今回は因数分解の切り口で説明していきます。
数はそのものずばりで、数ではかるということです。それによって、投入すべき兵員の数が決ます。今回は因数分解のプロセス分解で説明します。
称は比較してはかるということです。敵と味方の戦力を図ります。今回は、同業他社や競合との比較を説明します。
勝は勝敗をはかるということです。今回は因数分解した行動の計画と結果の因果関係の説明と人の関係についての説明を行います。
今回は合理的な計算の方法を因数分解で説明しながら、ビジネスにおける係数の用い方の一つを説明していきます。
また、孫子兵法戦略による因数分解も大分流比因人に繋がっています。大で目的を確認し、分で因数分解の切り口で分け、流でプロセスの流れで分解し、比で同業他社や競合と比較し、因で結果を分析し、人で人の要素を考えていきます。
したがって、度量数称勝もATOOSの考え方と合致しているのです。
度
物差しで測る
戦場となる土地をはかる
「大」
最初に質問をする
顧客にとって戦場となる土地というのはターゲットとする市場です。
ターゲットとなる市場の内容がおおよそわかれば手の打ち方がわかってきます。
しかし、その前に
1)どのような問題なのか
を質問します。そして、次の質問は、
2)なぜのその問題を解決する必要があるのか
です。そして、
3)達成したい目標をどのような内容か
を質問し、
4)(追加の質問を行う)
を実施します。
5)(問題解決の方向性を示す)
という流れになります。
なぜのその市場を狙う必要があるのか
経営上の問題には必ず優先順位があります。その優先順位に従って行動を起こすべきです。
しかしながら、時にその優先順を無視した関心を示す時があります。
たとえば、競合がそれを既に行っている。同業他社が先んじてそれを採用している。ある情報から注目されているトレンドがあり自社でも行いたい。などのことから関心を持つことがあります。
情報集め程度ならば、時間があれば話に付き合うこともありますが、それの採用を検討しているというならば、その整理を行う必要があります。
どのような問題なのか
問題とは何か困っている、あるいは達成したいが現状それが行えないなどです。
ATOOSの問題とは心事報が願とどれだけの差異があるかを整理していきます。
事報が願と比べ平新以下の壊離異古にある場合には、それを理解することで対策や展開につなげることができます。
ここで注意する必要があるのは、最初の質問は何か問題はありませんかという質問をしないことです。
達成したい目標はどのような内容か
達成したい目標を明確にすることは重要です。ここが曖昧ですと後々顧客との関係が悪くなる可能性を秘めています。
前の質問により優先順位を変えて行う必要性を確認することができますし、我々が何を行えばよいかも明らかにすることができます。
(追加の質問を行う)
追加の質問とはこれまでの質問により明らかになったテーマに関する質問です。
基本的には戦略的なテーマ、経営改善的なテーマに分かれていきます。あるいは一般的な質問です。一般的な質問とは達成したい目標は明らかでも質問者の知識や専門以外のテーマなので追加の質問ができない時に行う質問です。
ただし、本来ならば再度質問の機会をいただいて準備して臨む必要はあるでしょう。一般的な質問は5C(自社<顧客>、顧客の顧客、競合、コスト、チャネル)に沿って行います。
(問題解決の方向性を示す)
これまでの質問により大まかな情報を得ているはずです。そこで今後の大まかな問題解決の方向性を顧客もしくは見込客に同意が得られれば、次のステップに進むことはできます。
量
升目ではかる
投入する物資・兵器の量が決まる
「分」
因数分解:切り口
先ほどの顧客への問に追加の質問を行い戦略的なテーマなのか、経営的なテーマなのかは絞れました。
その前に質問によって明らかになった問題を整理します。仮に介護事業所で人手不足により利用者様への対応ができていないという問題が明らかになったとします。
簡単に整理すると「自因」は退職者の増加で、「作」は募集を行ったで「縁」反応がないで、「果」は採用者がいないで、「事報」は介護保険で定められている責任者の減員で利用者に他の事業所に移ってもらう状態までになってしまっているので「離」という状態です。問題をいったん整理することでテーマ全体を俯瞰してみることができ、後に因数分解した内容がテーマに沿ったものであるのかを確認することができます。
ここで簡単に更なる人材採用の強化や事業所内からの異動といった短絡的かつ当面的な対策にならないように抜本的な解決方法を考えていきます。そのためには問題の原因の分析が必要となりますが、今回は因数分解によりそれを行っていきます。
先ずは切り口を考えていきます。切り口を行うことの必要性はテーマの課題に対する最適な断面を見つけることです。よい切り口というのは対象の特徴を最適にとらえた指標をいいます。
先ほどの介護事業所のケースで考えますと人材採用の強化では、あまり良い切り口が生まれないでしょう。なぜなら、人材を増やすことだけになり収益との連動がない視点のために後に過剰人員や募集費のコスト増加による更なる問題の発生を引き起こしてしまい可能性があるからです。
そこで新たなテーマとして「人材を増やすことによって売上の向上」とします。その切り口は「一人当たり売上の向上」×「人員の増加」とします。この切り口によって売上と人員は指標として連動し先ほどの問題を発生させることを防ぎます。
この切り口の選定はとても重要です。原則に一つとして「もれなくダブりなく」が要求されます。先ほどの例では売上の切り口は一人当たりの売上×人員となり、ともに向上と増加によりベクトルを合わせています。よくある売上の切り口では客単価×客数というのがありますが、これでは人材採用の要素がなく介護業界にもなじみません。
また、切り口は内側だけに閉じたものより外側に繋がっている切り口があるほど視点が広がりやすくなります。例えば、売上の切り口の客単価×客数という閉じた切り口だけでなく市場規模×自社のシェアといった外部環境とつながっている切り口があると別の影響も理解することができます。閉じた切り口だと売上悪化の原因は客単価の減少であり購買点数を向上させることによりその改善を見込むという発想になりがちです。しかし、自社のシェアが上がっているのにもかかわらず、市場規模の減少が思いの外進んでおり、その結果売り上げの減少が起きているとするならば、閉じた切り口の改善の方向では良い結果が期待できないという観点が分かってきます。ただし、市場規模などのマクロな切り口が出てくる場合はそのデータが分からない場合が出てきますので、外部情報を検索したり、フェルミ推定を行い推測する方法も合わせて行うと良いでしょう。
この他にも様々な切り口の例がありますので興味がある方は問合せから連絡をください。
数
数ではかる
投入すべき兵員の数が決まる
「流」
因数分解:プロセス分解
ビジネスでいう因数分解とはその事象の構成要素を分解してその要素ごとのプロセスを見直し改善するということです。
例えば、売上を上げるという切り口の代表例は客単価×客数です。客単価は商品点数×商品価格に分解できます。客数も新規客+リピート客に分解できます。このような説明は他のところでも紹介はされていますが、その要素のプロセスまで説明しているところはかなり少ないようです。これは実務や経験が少ない。プロセスが分解できない。プロセスを知らない。などが理由のようです。
例えば、路面店ですと、新規客は全通行人数→視認人数→来店人数→新規客(新規に購入した客)というプロセスに分解できます。これは、店の前を通った人が、お店や看板をどれだけ見ているか、見た人がお店の中にどれだけ入ったか、入った人がどれだけ買ったか、というプロセスを分けたことによって改善の可能性を見つけることができるということに繋がります。
このプロセスの分解ができないといわゆる、「カゼオケ」の問題が起きます。風が吹けば桶屋が儲かるという短絡的な表現であり途中のプロセスを説明しておらず、故にその因果関係を他人に理解させることができません。
元に戻りますがこのプロセスを指標化することで後に目標や競合と比較して改善につなげることができます。先ほどの新規客ですと、視認人数÷全通行人数×100=視認率という指標になります。
介護事業所の例では切り口の一つの「一人当たり売上の向上」は人員数×一人当たり売上×売上目標率に分解することができます。「人員の増加」は人員数×採離率×人員増加目標率に分解することができます。
そして更に分解した各要素をプロセスに分解したり、更に再分解していくことで何が問題の原因なのかを理解することができるのです。介護事業所の例では人員数は責任者+正社員+非正規社員に分けることができます。一人当たりの売上も時間帯ごとに分けて行くことができます。
プロセスの分解のしかたや指標化のしかたに関心がある方は問合せからご連絡ください。
称
比較してはかる
敵と味方の戦力を図る
「比」
因数分解によって分析した原因に目星が付けられたならばそれを他と比較して真の原因なのかを見ていきます。比較する対象は、同業他社や競合などとの比較です。
比較してはかるも閉じた課題や解決策にならないために行います。自社の切り口やプロセスの要素として問題ないのではないかと思っていても同業他社や競合と比較をしてみると改善を行う必要性が見えてきます。
同業との比較は静的な情報と動的な情報を合わせて集めてみることをお勧めします。静的な情報とは様々な情報源から得られる過去の止まっている情報のことです。動的な情報とは現場で今起きている動いている情報です。
どんな新しい情報でも過去の情報になりますのでその鮮度は落ちています。しかし、しっかりとした信頼のおける情報源からの静的な情報はとても有益なものです。特に、競合が激しい、様々な問題が起きている、大きな問題が起こっている場合には情報は多いので、峻別しながら適切な情報を探してみましょう。
動的な情報は足で探すことも必要です。例えば、競合の情報を集めるには実際に競合のところに行くことが重要です。お店であれば看板の見やすさ、入り口の入りやすさ、商品の見やすさ、商品の選びやすさ、説明の分かりやすさ、価格の適切さ、など様々な情報が得られそれを基に自社と比較することができます。競合の売上も来店客数、店舗面積などから推定することもできます。
介護事業所の例ですと、。「人員の増加」の人員数は正規社員と非正規社員の構成割合が当該事業所は34対66ですが、厚労省のデータでは29対71で当該事業所は改善の余地があることが分かります。採離率も当該事業所が採用率0%で離職率が18%同じく厚労省のデータでは採用率19.9%、離職率が14.0%と差が大きいことが分かります。
勝
勝敗をはかる
「因」
勝敗をはかるということはより良い解決策を検討するということです。ここで大切なことは「比」で検討した同業他社や競合との比較で単純なキャッチアップにならないように注意することです。プランの段階であればプロセスのどの部分がネックになりそうか、シーの段階ならば結果としてどの部分がプランと異なりネックだったのかを検証していきます。
また、同業他社や競合と比較してリソースが足りないために目標となる数値を設定できないことも考えられます。それを無理に設定してしまうと未達成に終わりギャップが大きくなってしまいます。また、無理をして行った結果弊害を生んでしまったり別の問題を引き起こしてしまったなどの問題が発生する可能性があります。
また、結果を見る際には切り口やプロセス分解に誤りがなかったかを見ていきます。また、プロセスにボトルネックが見つかった時にはやり方を改善していきます。例えば、路面店のプロセスは新規客は全通行人数→視認人数→来店人数→新規客(新規に購入した客)というプロセスに分解しましたが、どうやら、ぐるなびを見てきている新規客が2割程度来店しているようだとしますとそれらのプロセスを分解して指標化していかなければならなくなります。
人を考える
因数分解の中にに人の要素を入れることは重要です。ついつい人の要素を忘れがちになります。また人の要素を入れても頭数ばかりをプロセスに分解したり指標化しがちです。しかしながら、人を動かすには人の気持ちの部分を分解や指標化していくことを行います。具体的にはESやCSの観点で分解や指標化することを組み合わせていくのです。介護事業所の例ですと、過去働いていた職場を辞めた理由というデータの中で一番多い理由は結婚、出産、育児31.7%ですが2番目は法人・事業所の理念や運営のあり方に不満があった25.0%、3番は職場の人間関係に問題があった24.7%でした。これらは制度、コミュニケーション、教育に問題があります。結婚、出産、育児があっても育児休暇制度や再就職制度がしっかりしていれば戻ってくることは可能です。常に人材不足なのですから仕事がないなんて言うこともありません。もちろん元の職種に戻れるかは状況次第ですが。法人・事業所の理念や運営のあり方に不満があったは少し問題は複雑です。公正で公明な制度の下で運営していても伝え方に問題があるならば、疑念を生んでしまいます。職場の人間関係に問題があったもどうしても事業所の規模と離職率に逆の相関関係があるようです。小さな組織ほど人間関係が濃密になりやすくそれが悪い方ににはたらいてしまうと離職率は高くなります。
しかし、これらは解決の方法によって改善させることは可能なのです。因数分解のプロセスは良い循環になれば好循環のプロセスを生み悪い循環になれば悪循環のプロセスを生みます。
最後に
今回は孫子の兵法の度量数称勝を通して現代ビジネスで使われている因数分解を説明しましたがいかがでしょうか?
どの時代においてもしっかりとした計数を用いて目標達成していくことの重要性は同じかと思います。
これまでの内容と少し異なり定量的な問題の解決のしかたの一つとしてビジネス的な因数分解を皆様も活用されますようお勧めいたします。